文章來源:web R25

いきなりだが、日本人はなぜ遅刻に厳しいのか。仕事や人との待ち合わせには時間通りにちゃんと行く。これが多くの日本人の一般的な感覚だが、一方、諸外国では少し違うようなのだ。そのわかりやすい例が鉄道の定時。日本では新幹線が「定時に遅れる」というのは1分以上を指すが、ほかの国では1分なんて遅れたうちに入らない。『定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか』(三戸祐子/新潮文庫)によると、イタリアで「定時に遅れる」とは15分以上を意味し、英国は10分以上で、ドイツも5分以上。他国では30分以上の遅れなどめずらしくもなく、それでも乗客は悠然とホームで新聞を広げ、日本人だけがイライラしたりしているという。

なんで日本人は遅刻や時間にうるさいのか。一説には日本人の気質とか国民性ともいわれるが、じつは、日本人も初めから時間にうるさかったわけではない。『遅刻の誕生』(橋本毅彦・栗山茂久編/三元社)によれば、明治初期に科学技術を日本に伝えにきたオランダ人技師たちは、時間をまったく守らない日本人の悠長さに呆れ、困り果てていたという。しかも、それは時計がない時代だったからというだけでもない。定時法の導入や時計の普及など、西洋の近代的な時間システムをとり入れたあとも、まだ日本の鉄道では30分ぐらいの遅れはあたりまえだったし、工場では労働者の遅刻が横行。そこで米国生まれの科学管理法を導入したり、大正期には政府が「時の記念日」を制定し、国を挙げて時間規律の浸透に力を入れた。その結果、ようやく鉄道や工場で時間が守られるようになっていったのが昭和初期、わずか80年ほど前のことにすぎないのだ。

もっとも、同書によると、その時間規律が日常の仕事の現場や日本人の生活レベルでどんなふうに定着していったのか、明確な答えはまだ出ていないという。わかっているのは、そのむかし、時間に対して「おおらか」だった日本が、いつの間にか世界一「厳しく」なってしまったということ。もちろん、いいことだとは思うのだが…。
(押尾銅山)

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